【医師監修】肌の乾燥は皮脂欠乏性湿疹を招く?自分でできる対処法を紹介します

【医師監修】肌の乾燥は皮脂欠乏性湿疹を招く?自分でできる対処法を紹介します

肌のカサカサやかゆみが気になって、無意識のうちに爪でかいてしまうことはありませんか?乾燥によってバリア機能が低下した肌は少しの刺激でダメージを受けやすく、赤みや湿疹などが出る「皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)」に発展しやすい状態です。

空気が乾燥する秋冬や、冷暖房を使用する季節は、適切な保湿ケアですこやかな肌をキープしましょう。ここでは皮脂欠乏性湿疹の原因と治療法、セルフケアの方法を詳しく解説します。

  • 皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)とは?
    • 皮脂欠乏性湿疹の原因
    • 症状
  • 皮脂欠乏性湿疹の予防・対処法
    • 保湿
    • 入浴はぬるま湯で短時間
    • 乾燥対策
  • 乾燥やかゆみをセルフケアするなら!市販薬の選び方と使い方
    • 皮膚科での治療は?
  • 【Q&A】皮脂欠乏性湿疹を予防するために知っておきたいこと
    • 皮脂欠乏性湿疹になりやすい人は?
    • 皮脂欠乏性湿疹は冬にしかならない?
    • 食事面で気を付けることは?
    • どんな衣類がおすすめ?
    • 硫黄入りの入浴剤を使ってもいい?
  • 皮脂欠乏性湿疹は予防できる!セルフケアで肌を守りましょう

皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)とは?

皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)とは?

皮膚は層構造になっていて、最も表面にあるのが「角層」です。角層は、通常皮脂や汗を含んだ皮脂膜に覆われ、セラミドをはじめとする角質細胞間脂質や天然保湿因子により水分が保持されています。

しかし、様々な要因で皮脂や水分が減少すると、角層の水分保持機能が阻害され、皮膚のバリア機能が低下します。これにより、肌にカサつきやかゆみが生じたものが「皮脂欠乏症(ひしけつぼうしょう)」です。皮脂欠乏症は「乾皮症(かんぴしょう)」と呼ばれることもあります。

皮脂欠乏症では、肌の乾燥からひび割れや皮むけが起きますが、この時点で適切なケアを行えば湿疹の発現には至りません。しかし、何らかの要因でさらに乾燥が進んだり、かゆみが気になって爪でかいたりなどの刺激が加わると、皮脂欠乏性湿疹が誘発されることがあります。

皮脂欠乏性湿疹の原因

皮脂の分泌は加齢に伴って減少します。そのため皮脂欠乏性湿疹も、男女を問わず中高年以上で多く発症します。ほかに、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患や、糖尿病などの内臓疾患がもととなり皮脂欠乏性湿疹を発症することもあります。

また、冷暖房の使いすぎや体の洗いすぎなどの生活習慣は皮脂を減少させる一因となります。肌の皮脂量が減少すると皮膚のバリア機能が低下してしまうため、予防のためには適切な保湿ケアが重要です。

症状

皮膚が乾燥すると、ひび割れ、かゆみ、フケのように皮膚が剥がれ落ちる落屑(らくせつ)、赤みなどの症状が引き起こされます。この状態に様々な刺激が加わり、炎症が起きて湿疹化したものが皮脂欠乏性湿疹です。

さらに症状が進むと、「貨幣状湿疹」と呼ばれる1~5cm程の円形の湿疹が発生することも。重症化に伴い、皮膚の表面が小さく盛り上がる丘疹(きゅうしん)や、膿をもった水ぶくれが生じることもあります。より進行すると皮膚が分厚くなる苔癬化(たいせんか)や、色素沈着を招くため、早い段階でのケアが重要です。

皮脂欠乏性湿疹の予防・対処法

目薬の差しすぎはよくない?

保湿

皮脂欠乏性湿疹では、保湿ケアが肝心です。特に、皮脂が失われ、皮膚の水分が蒸発しやすい入浴後は、速やかに保湿するようにしましょう。入浴後に限らず、乾燥しやすい人は朝晩など、こまめに保湿すると効果的です。

おすすめの保湿剤は、水分と油分の両方を含むボディクリームや、肌をこすらずに塗り広げられるジェルタイプ。清潔な手で保湿剤をとり、患部の数か所に置いてから、手のひらで優しく丁寧に塗り広げましょう。

関連記事:【医師監修】正しい保湿ケアの方法とは?季節に合わせた乾燥対策のポイントも

入浴はぬるま湯で短時間

熱いお湯で長時間入浴すると、皮脂や角層内の保湿成分が流れてしまい乾燥を招きます。入浴は38~40℃のぬるま湯で10分程度に済ませてください。清潔にしようと一日に何度も入浴したり、ナイロンたわしやブラシ、固いタオルなどでゴシゴシ洗ったりすることは、肌への刺激になるため避けましょう。

体を洗うときには、刺激の少ない石鹸またはボディーソープを使い、手か柔らかい布で泡を作ってから優しく洗いましょう。また、入浴後は水分が蒸発しやすいため、軽く体を拭いて速やかに保湿します。保湿効果のある入浴剤を使うこともおすすめです。

乾燥対策

皮膚のバリア機能を正常に保つためには、皮膚が乾燥しないよう環境や服装を整えることも大切です。

冬場の暖房器具は設定によっては乾燥の原因となるため、加湿器などで湿度を調整し、室内湿度を40~60%にキープしましょう。また、出かける際は手袋やマフラーなどで肌の露出を防ぐようにすると、皮膚からの水分の蒸発を抑えることができます。

乾燥やかゆみをセルフケアするなら!市販薬の選び方と使い方

正しい点眼方法

乾燥やかゆみを感じたら、市販薬でセルフケアするのも効果的な方法のひとつ。かゆみがある場合は、抗炎症作用のあるステロイド外用剤(塗り薬)を検討してみましょう。ステロイド外用剤は症状や年齢、使用する部位によって適した種類があるため、薬剤師や登録販売者に相談しながら選ぶことをおすすめします。

保湿剤と併用する場合は、正常な皮膚にステロイド外用剤が付かないよう、先に保湿剤を塗り、後から患部にだけステロイド外用剤を塗るようにしましょう。

関連記事:【医師監修】湿疹とは?原因や主な症状、市販薬での治療法を解説します

皮膚科での治療は?

かゆみがひどい場合、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤などを内服し、症状の悪化を防ぐ治療も選択肢として考えられます。

また、外部からの刺激ではなく、糖尿病や慢性腎不全などの病気が原因で肌に乾燥やかゆみが生じているケースもあります。市販薬でセルフケアしても改善が見られなければ、皮膚科で診察を受けましょう。

【Q&A】皮脂欠乏性湿疹を予防するために知っておきたいこと

【Q&A】皮脂欠乏性湿疹を予防するために知っておきたいこと

皮脂欠乏性湿疹になりやすい人は?

皮脂欠乏性湿疹は、皮脂腺の発達していない乳幼児や、加齢に伴って皮脂腺が退化していく中高年層、主に高齢者に起こりやすい病気です。また、アトピー素因を持ち、ダニやハウスダスト、花粉、食事などに対してアレルギー反応を起こしやすい人も発症しやすいとされています。

上記に当てはまる方は、肌のバリア機能を正常に保つため、日頃から保湿ケアを徹底しましょう。冷暖房使用時は特に肌の水分が蒸発しやすいため、より入念なケアを心がけてください。

また、皮脂欠乏性湿疹の症状は膝から下の下腿部分で多く発症します。お風呂あがりに保湿剤を塗るなどの対策をして乾燥を防ぎましょう。

皮脂欠乏性湿疹は冬にしかならない?

皮脂欠乏性湿疹は皮膚が乾燥しやすい冬に起こりやすい病気ですが、エアコンや扇風機を使用する冷房の時期にも注意が必要です。季節を問わず、体の洗い過ぎによっても発症します。そのため、特に乾燥しやすい人は、季節に合わせた保湿剤を選び、通年での使用を心がけましょう。

食事面で気を付けることは?

普段から栄養バランスのとれた食事を心がけ、肌に良い栄養素を積極的に摂取しましょう。ビタミンAやビタミンCには皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きがあります。

また、水分補給を怠ると肌が乾燥する原因に。気温が低い季節は特に水分補給を忘れがちですが、水や白湯を意識的に飲むようにしましょう。量は1日あたり1~1.5リットルを目安に、コップ1杯の水を2~3時間おきに飲むのがおすすめです。

血液の循環をよくする作用を持つ香辛料やお酒は、肌のかゆみを増加させることもあるため、摂取はあまりおすすめできません。

関連記事:乾燥肌は体の内側から改善! 食事のポイントやおすすめの栄養素を紹介

どんな衣類がおすすめ?

皮膚への刺激を極力減らすためにも、肌に優しい綿素材などを選びましょう。一方で、化学繊維やウールなどの肌に刺激となりやすい素材、またゴムがきつい衣類は、かゆみの原因となることもあるため避けるようにしましょう。

硫黄入りの入浴剤を使ってもいい?

硫黄の入った入浴剤は使用しないようにしましょう。硫黄には皮脂の分泌を抑えて皮膚を乾燥させる作用があるため、皮脂欠乏性湿疹の予防や改善には適しません。入浴剤を選ぶ際は、保湿目的で薬用タイプのものがおすすめです。

皮脂欠乏性湿疹は予防できる!セルフケアで肌を守りましょう

冬になると多くの人が悩む肌の乾燥。しっかり保湿をして、皮脂欠乏性湿疹を予防しましょう!かゆみがある場合は市販薬でのセルフケアも対策のひとつ。もしそれでも、なかなかかゆみがおさまらない場合は、皮膚科で専門医に診察してもらいましょう。

監修者写真

監修者
福井 美典 先生
福井内科医院勤務
糖尿病内科、救急医療、総合内科、美容皮膚科、旅行医学、オーソモレキュラー栄養療法、産業医学

からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱくの食事の大切さを、自ら栄養指導をおこなう。分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、からだの細胞を活性化させる治療法を取り入れている。
野菜ソムリエの知識を生かし、栄養素が効率良く摂れる食べ合わせを意識したレシピを考案。美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。

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