【医師監修】ヘパリン類似物質ってどんな成分?種類や保湿剤の選び方を徹底解説します

【医師監修】ヘパリン類似物質ってどんな成分?種類や保湿剤の選び方を徹底解説します

寒い季節は特に気になる、顔やひじ、かかとなどの皮膚の乾燥。保湿剤として「ヘパリン類似物質」を含むアイテムを探している人もいるのではないでしょうか。

「ヘパリン類似物質」を含むアイテムは、医療用医薬品(処方薬)、一般用医薬品(市販薬)、薬用化粧品(医薬部外品)の3つに区別されており、それぞれで使い方が異なります。ここでは、ヘパリン類似物質を含む医薬品や化粧品の種類、自分に合った保湿剤の選び方、使用する際の注意点まで詳しく解説します。

  • ヘパリン類似物質とは?
  • ヘパリン類似物質(薬用化粧品を除く)の作用
    • ヘパリン類似物質を含む「医療用医薬品」
    • ヘパリン類似物質を含む「一般用医薬品」
  • ヘパリン類似物質を含む医薬品の剤形
  • 「尿素」との違いは?
  • ヘパリン類似物質を使用するときの注意点
  • ヘパリン類似物質を含む薬用化粧品もある
  • ヘパリン類似物質を賢く使って、肌の乾燥を防ぎましょう

ヘパリン類似物質とは?

「ヘパリン類似物質」は、皮膚の最も外側にある角質(角層)に作用し、保湿に優れた効果を発揮する成分です。医療用医薬品、一般用医薬品、薬用化粧品の有効成分として用いられています。

ヘパリン類似物質(薬用化粧品を除く)の作用

ヘパリン類似物質(薬用化粧品を除く)の作用

ヘパリン類似物質には保湿のほかにも血行促進、抗炎症の作用が確認されています。それらの作用を皮膚疾患の治療に用いるケースから、特徴を見てみましょう。

ヘパリン類似物質を含む「医療用医薬品」

医療用医薬品(処方薬)は、医師が診断を行ったうえで発行する処方箋に基づき、薬剤師が調剤する薬のことです。

ヘパリン類似物質を含む医療用医薬品は、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)※やケロイドの治療と予防、皮脂欠乏症の治療などに用いられます。このほか、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の筋肉痛や関節炎などに対する治療薬として使用されることもあります。
※外傷や手術による傷が赤くみみず腫れのように盛り上がり、かゆみや痛みが出現した状態

ヘパリン類似物質を含む「一般用医薬品」

一般用医薬品(市販薬)はドラックストアや薬局などで、自分で選んで購入する薬です。様々な年齢や体質の人が使用することを想定して作られていますが、副作用のリスクに注意が必要な薬もあるため、薬剤師または登録販売者と相談して薬を選びましょう。

薬によって異なりますが、ヘパリン類似物質を含む一般用医薬品は乾皮症や角化症、手足のひび・あかぎれなどを治療するために用いられています。

ヘパリン類似物質は一般用医薬品にも、医療用医薬品と同じ割合(100g中0.3g)の配合が認められています。

ヘパリン類似物質を含む医薬品の剤形

ヘパリン類似物質を含む医薬品の剤形

ヘパリン類似物質を含む医薬品の剤形には「クリーム」「ローション」「フォーム(泡状スプレー)」などの種類があります。市販薬は季節や塗布する部位に合わせて選んでみましょう。

クリーム 伸ばしやすく、べたつきも少ない。季節を問わず使いやすい。
ローション 肌になじみやすく、広範囲の患部にも塗りやすい。
頭皮などの有毛部にも使用できる。暑い季節にも快適な使用感。
フォーム
(泡状スプレー)
伸びが良く、さっぱりとした使用感。
べたつきは残さず適度な保湿力がほしい場合に適している。

「尿素」との違いは?

ヘパリン類似物質と同じく、皮膚の乾燥や手指の荒れの治療に効果を発揮するのが「尿素」配合の保湿剤です。

保湿剤の種類には「モイスチャライザー」と「エモリエント」の2種類がありますが、ヘパリン類似物質と尿素はともに「モイスチャライザー」に含まれます。モイスチャライザーは、肌に水分を保持する成分で保湿作用を発揮します。一方でエモリエントは、肌に塗布することで水分の蒸発を防ぎ、角質を柔らかくします。エモリエントを代表する保湿剤では「ワセリン」が有名です。

ヘパリン類似物質と尿素の大きな違いは、尿素には保湿効果以外に角質を柔らかくする作用がある点です。肌のごわつきを感じる部位には尿素を使用することで、皮膚をなめらかにする効果が期待できます。ただし、尿素は肌の状態や体質によって刺激を感じやすいため、尿素の配合量も注目して選択することがおすすめです。

ヘパリン類似物質を使用するときの注意点

ヘパリン類似物質を使用するときの注意点

ヘパリン類似物質は比較的刺激が少ないとされる保湿剤ですが、稀に刺激を感じたり、発疹や皮膚の赤み・かゆみなどの副作用を起こしたりする場合があります。顔に使用する場合は、目の周りや粘膜を避けて塗りましょう。肌に合わないと感じたら、すぐに使用を中止し、必要であれば皮膚科を受診してください。

また、ヘパリン類似物質には血行促進作用があり、血液を固まりにくくするため、血友病、血小板減少症、紫斑病などの出血性血液疾患をお持ちの方は使用してはいけません。出血のある傷口への使用は控える、ジュクジュクと炎症を起こしている患部には使用前に医師等に相談するなど、その他の注意事項も確認し、適切に使用しましょう。

ヘパリン類似物質を含む薬用化粧品もある

ヘパリン類似物質を含む薬用化粧品もある

近年では、ヘパリン類似物質を配合したローションやミルクなどの薬用化粧品(医薬部外品)も多く登場しています。こちらは医療用医薬品(処方薬)や一般用医薬品(市販薬)ほどヘパリン類似物質の配合量は多くありませんが、皮膚に適度な水分を保持させ、肌本来のバリア機能をサポートすることで、乾燥や刺激などから皮膚を守ります。

毎日のケアで乾燥予防をするなら薬用化粧品、保湿ケアを続けていても、乾燥で赤みやかゆみが出てしまった場合にはヘパリン類似物質配合の一般用医薬品(市販薬)を選ぶというように、適切に使い分けましょう。

関連記事:【医師監修】正しい保湿ケアの方法とは?季節に合わせた乾燥対策のポイントも

ヘパリン類似物質を賢く使って、肌の乾燥を防ぎましょう

乾燥による肌荒れやかゆみなどの肌トラブルを感じたら、高い保湿力を持つヘパリン類似物質が有効です。剤形にも様々なタイプがあるため、選び方や使い方で悩んだ時は医師や薬剤師に相談してみましょう。

監修者写真

監修者
福井美典 先生

福井内科医院勤務
糖尿病内科、救急医療、総合内科、美容皮膚科、旅行医学、オーソモレキュラー栄養療法、産業医学
からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱくの食事の大切さを、自ら栄養指導をおこなう。分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、からだの細胞を活性化させる治療法を取り入れている。
野菜ソムリエの知識を生かし、栄養素が効率良く摂れる食べ合わせを意識したレシピを考案。美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。

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