【医師監修】熱を下げる方法とは?急な発熱に備えて用意しておきたいもの

【医師監修】熱を下げる方法とは?急な発熱に備えて用意しておきたいもの

風邪やインフルエンザ、ワクチン接種後の副反応の代表的な症状として、発熱があります。熱が出てつらい時、どのように対処すべきなのでしょうか。本記事では発熱のメカニズムから発熱時の対処法、市販の解熱薬によるセルフケアの方法まで詳しく解説します。

  • なぜ熱が上がる?発熱のメカニズムとは
    • 熱が出たらまず「検査」を
  • 熱を下げたい!発熱時の対処法
    • まずは安静に
    • 水分補給を積極的に
    • 食事や睡眠は十分に
    • クーリングも有効
    • つらい時は解熱鎮痛薬を使おう
  • ワクチン接種後の発熱にはどう対処する?
  • 市販の解熱鎮痛薬によるセルフケアのポイント
    • 解熱鎮痛薬は新型コロナウイルス感染症の発熱時にも服用可能
    • インフルエンザによる発熱に使用可能な解熱鎮痛薬
  • 発熱に備えて用意しておくべきものリスト
    • 食料品は一週間分を目安に
    • 体温計、衣類、日用品など
  • 発熱時の注意点
    • 熱を無理に下げるのはNG
    • 熱が下がっても無理は禁物
  • 発熱したら安静に。解熱鎮痛薬は適切な選択を

なぜ熱が上がる?発熱のメカニズムとは

なぜ熱が上がる?発熱のメカニズムとは

病気の原因となる細菌やウイルスが体内に侵入すると、一部の免疫細胞が体温調節をつかさどる脳の視床下部に外敵の侵入を伝え、平熱よりも体温を上げることで免疫細胞の働きを活性化させます。発熱はウイルスや細菌の増殖を抑えるための防御反応であるため、熱が出たからといって焦って下げる必要はありません。

熱が出たらまず「検査」を

免疫細胞の働きが活発になっているとはいえ、やはり発熱はつらいもの。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザへの感染が疑われる場合は、発熱外来やかかりつけの医療機関へ連絡し、検査を受けましょう。

のどの痛み、発熱、咳、倦怠感等の症状を自覚した際は、医薬品の抗原検査キットを使ってセルフチェックを行うことも可能です。抗原検査キットはドラッグストアで購入できるので、急な発熱時にも医療機関を適切に受診するために常備しておくことをおすすめします。

※無症状者への使用は推奨されていません。
※症状がない時に使用した場合、結果が正しく出ない可能性があります。

熱を下げたい!発熱時の対処法

熱を下げたい!発熱時の対処法

これらの感染症でないことが確認できたら、次の方法で体を休めて回復を待ちましょう。

まずは安静に

発熱時はただ横になっているだけでも体力が消耗されます。無理に体を動かすと、症状が悪化したり、発熱が長引いてしまったりするおそれも。

熱が出てきたらできるだけ体力を温存して、体の回復に努めることで、結果的に熱が早く下がります。食事やトイレなど、必要最小限にとどめ、なるべく寝て過ごすのがおすすめです。

水分補給を積極的に

発熱時は、寝ているだけでもかなりの汗をかくため、体内の水分が普段より多く失われます。脱水症状を起こさないためにも、こまめな水分補給を心がけましょう。

発汗すると、水分だけでなく塩分も同時に失われます。発熱時の水分補給は、塩分やミネラルを含むスポーツドリンクや経口補水液がおすすめです。

食事や睡眠は十分に

発熱で体力を消耗しきってしまうと、回復まで時間がかかるおそれもあるため、できるだけ食事や睡眠をとり、体力を補いましょう。ラーメンやピザといった脂肪分の多い食事は消化にエネルギーを使ってしまうので、発熱時には控えたほうが無難です。

クーリングも有効

悪寒がする場合は、まだ熱が上がりきっていないため、なるべく体を温めましょう。厚着をしたり、温かい飲み物を飲んだりするのもおすすめです。

熱が上がりきり、汗をかいたり、暑く感じたりしたら、体が上がった熱を平熱に戻そうとしているサイン。薄着にして、こまめに汗を拭きましょう。わきの下や首筋、足の付け根など、太い血管があるところに、タオルに包んだ保冷剤をあてる「クーリング」も有効です。

つらい時は解熱鎮痛薬を使おう

発熱による体力の消耗がひどい場合は、無理せず市販の解熱鎮痛薬の服用を検討しましょう。

ワクチン接種後の発熱にはどう対処する?

新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染症のワクチンは病原体を構成する物質やその遺伝情報などをもとに作られています。ワクチンを接種することで発症や重症化の予防が期待できますが、ワクチン接種後、病原体に対する免疫を獲得する過程で、発熱などの副反応がみられることがあります。

新型コロナワクチンおよびインフルエンザワクチン接種後の副反応による発熱の場合にも、解熱鎮痛薬は有効です。熱を下げるだけでなく、関節痛などの緩和も期待できます。

ただし、ワクチン接種前に、予防的に解熱鎮痛薬を服用することは推奨されていません(※)。ワクチン接種後、発熱や頭痛などの副反応がある場合は服用を検討してください。
(※)2023年2月9日時点

市販の解熱鎮痛薬によるセルフケアのポイント

市販の解熱鎮痛薬によるセルフケアのポイント

発熱で体がつらい時には、我慢せずに医療機関を受診しましょう。適切な診断で原因に合った対処ができます。

急な発熱にすぐ対処したい場合は、市販の解熱鎮痛薬を服用して様子を見る方法もあります。焦る気持ちがあっても、解熱鎮痛薬は用法・用量を守って正しく服用してください。自分の症状や体質に合った薬がわからない時は、かかりつけの医師や薬剤師に相談して選びましょう。

特に、薬剤性のアレルギーやぜんそくの既往がある人、医療機関で処方された薬を服用している人、妊娠中の人は購入前に必ず薬剤師に相談しましょう。妊娠している場合、NSAIDsは避けたほうが良いとされています。

NSAIDsとは

非ステロイド性抗炎症薬を意味するNon-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略称。
痛みのもととなるプロスタグランジンという物質の生成を抑制し、痛みや発熱、炎症の症状を抑える。
主なNSAIDsにはイブプロフェン、アスピリン、ロキソプロフェンなどがある。

関連記事:セルフケアにおける市販薬の選び方やポイントを紹介!

解熱鎮痛薬は新型コロナウイルス感染症の発熱時にも服用可能

新型コロナウイルス感染症の療養中に発熱した場合も、市販の解熱鎮痛薬を服用できます。ただし、新型コロナウイルス感染症の療養に関する政府の方針は状況に応じて変わるため、発熱した時点で最新情報を確認しましょう。

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けは、2023年5月8日に2類から5類へ移行される予定です※1

政府は5類移行後の医療提供体制について「入院措置を原則とした行政の関与を前提とした限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な通常の対応に移行していく」と方針を示しました。

これに伴い、新型コロナウイルス感染症は一般の医療機関でも診察を受けられるようになります。しかし、移行からしばらくは医療現場の混乱なども予想されているため、症状が比較的軽いのであれば、抗原検査キットによるセルフチェックや、市販の解熱鎮痛薬などを使ったセルフケアも検討しましょう。

◎位置付けによって変わる新型コロナウイルス感染症への対策

2023年2月時点 5類移行後
陽性者の行動制限 あり なし
濃厚接触者の行動制限 あり なし
受診できる医療機関 発熱外来などに限られる 一般的な医療機関での対応を目指し拡大へ
ワクチン接種 無料 2023年度は5歳以上の全ての者を対象に接種時期は秋冬見込み※2
入院や検査に伴う費用の負担 一部公費負担 一部公費負担※3
屋内でのマスク着用 着用を推奨 個人の判断が基本
(2023年3月13日より)

※1 2023年3月13日時点
※2重症化リスクが高い人には春夏にも追加で接種を行う方針(自己負担なし)
※3 2023年10月以降は、感染状況や他の疾病との公平性を考慮し検討

最新情報は厚生労働省のWebサイトをご確認ください。

インフルエンザによる発熱に使用可能な解熱鎮痛薬

インフルエンザによる発熱が疑われる場合は、早急に医療機関を受診しましょう。医師の判断により抗インフルエンザ薬を服用することで症状を緩和し、早い回復が期待できます。

すぐに医療機関を受診できない場合は、市販の解熱鎮痛薬も使用可能です。ただし、インフルエンザによる発熱時に服用できるのは有効成分としてアセトアミノフェンを含む解熱鎮痛薬に限定されます。一部のNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)はインフルエンザ脳炎・脳症などの重篤な合併症に関与しているおそれがあるためです。

発熱に備えて用意しておくべきものリスト

発熱などで体調がすぐれない時には、ちょっとした買い物も困難に。発熱した時にあると役に立つものを紹介します。ワクチン接種前はもちろん、日頃から備えておくと安心です。発熱した時に慌てないよう、ぜひ参考にして準備してください。

食料品は一週間分を目安に

発熱で体がつらい時は体を休めることが優先です。料理をするのは熱が下がってからにしましょう。レトルトのおかゆやパックごはんなどを用意しておくと、レンジや湯せんで温めるだけですぐに食べられます。同じ味に飽きないよう、ふりかけなどを用意しておくのもおすすめです。また、経口補水液やスポーツドリンクなどのペットボトルも多めに用意しておきましょう。ペットボトルに付けられるストロー付きキャップがあれば、体を起こせない時でも楽に水分補給ができます。

体温計、衣類、日用品など

発熱時は汗をかきます。すぐに着替えられるよう、着脱しやすい下着やパジャマなどを用意しておきましょう。シルエットがゆったりした衣服を準備しておくと、ワクチン接種後の副反応による腫れや痛みで腕が上がらない時にも着替えやすいのでより安心です。

体温計のほか、トイレットペーパーやティッシュペーパー、ごみ袋など、生活必需品も日頃から少し多めにストックしておきましょう。

また緊急時に備えて、枕元にスマートフォンやブザーなどを用意しておくのもおすすめ。家族や友人にすぐに連絡できるようにしておくと、より安心して体を休められます。

発熱時の注意点

発熱時の注意点

発熱時にやってはいけないことを紹介します。注意点を知って、正しく熱を下げるのが回復への近道です。

熱を無理に下げるのはNG

発熱は病原体と戦う免疫細胞たちの働きを強める効果もあります。熱を無理に下げると、免疫細胞たちの働きが鈍くなり、症状が悪化してしまうおそれも。そのため、熱が出たからと言ってすぐに下げようとするのはNGです。十分に休める場合は、しっかりと休養して回復を目指しましょう。

発熱で食事や睡眠が十分にとれていない場合は、無理せず解熱鎮痛薬を使いましょう。ただし、熱を早く下げたいからといって、既定の用量を超える服薬や、複数の解熱鎮痛薬を一度に服用することは絶対にやめてください。

熱が下がっても無理は禁物

熱が下がった直後は、体力が消耗・低下している状態です。無理をするとぶり返すおそれもあります。熱が下がったとしても、数日間は無理をせず、バランスの良い食事と十分な睡眠をとり、できるだけ安静にして過ごしましょう。

関連記事:【管理栄養士監修】理想のPFCバランスや食事とは?

発熱したら安静に。解熱鎮痛薬は適切な選択を

発熱には免疫細胞を活発にする役割があるため、無理に熱を下げようとする必要はありませんが体力の消耗が激しい場合は無理せず解熱鎮痛薬の服用を検討しましょう。

年齢、病気の既往などによって適切な解熱鎮痛薬は異なるため、不安がある場合は医師や薬剤師に相談のうえ、症状や体質に合ったものを選んでください。

監修者写真

監修者
福井 美典 医師
(糖尿病専門医・抗加齢医学専門医・救急科専門医・総合内科専門医・栄養療法医・美容皮膚科医)

からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱくの食事の大切さを、自ら栄養指導をおこなう。分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、からだの細胞を活性化させる治療法を取り入れている。
野菜ソムリエの知識を生かし、栄養素が効率良く摂れる食べ合わせを意識したレシピを考案。美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。

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