【医師監修】休肝日はなぜ必要?最適な頻度やおすすめの過ごし方を解説

【医師監修】休肝日はなぜ必要?最適な頻度やおすすめの過ごし方を解説

毎日飲酒を続けていると、肝障害や生活習慣病、アルコール依存症のリスクが高まり、心身の不調を招くおそれがあります。日頃からお酒を飲む機会が多い人は、肝臓に負担をかけないように週に1日以上の「休肝日」を設けましょう。

本記事では、肝臓の働きやアルコールが健康に及ぼす影響をはじめ、休肝日の必要性と適切な頻度、休肝日を効果的に過ごすためのコツを解説します。

  • 休肝日とは?
  • 肝臓の働きとアルコールの影響
    • 毎日飲酒することによる健康リスク
    • アルコール依存症を発症する可能性も
  • 休肝日を設けるべき理由
  • 休肝日はどれくらいの頻度が適切?
  • 休肝日のおすすめの過ごし方
    • 炭酸水やノンアルコール飲料を飲む
    • 運動を取り入れる
    • 栄養バランスの取れた食事をする
  • 週に2日は休肝日を設けてお酒と正しく付き合おう!

休肝日とは?

休肝日とは、文字の通り「肝臓を休める日」のことを指します。とくに毎日飲酒の習慣がある人に向けて、お酒を飲まない日を作ることを推奨するために作られた造語です。

厚生労働省が作成する『健康に配慮した飲酒に関するガイドライン』(令和6年2月19日公表)の中でも、休肝日という言葉は使われていないものの、「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける(毎日飲み続けるといった継続しての飲酒を避ける)」ことが必要だとされています。

「沈黙の臓器」とも呼ばれる肝臓は、ダメージを受けていても症状が出にくく、気づかないうちに病気が進行しているケースも少なくありません。そのため、毎日の飲酒や大量飲酒はなるべく控え、休肝日を設けて肝臓をいたわることが大切です。

肝臓の働きとアルコールの影響

肝臓の働きとアルコールの影響

最も大きな臓器である肝臓は体重の約50分の1を占め、500以上の仕事をこなす「生体の化学工場」です。主な働きに「消化吸収を助ける胆汁の生成・分泌」「腸から吸収した栄養素の加工・貯蔵」「毒物の中和」の3つがあり、いずれも生命活動には欠かせません。

なかでも、「毒物の中和」とはいわば解毒作用のことで、アルコールのほか、煙草に含まれるニコチンなど、人体にとって有害となる物質の分解を行っています。

肝臓がアルコールを処理するスピードには個人差がありますが、平均して1合(180mL)あたり3時間程度と言われています。ただし、その時間は飲酒量に比例して長くなり、飲み過ぎた分肝臓の活動時間も増えるため、就寝中も働き続けることに。そのため、肝臓にはかなりの負担がかかり、さまざまな健康リスクを引き起こすおそれがあります。

毎日飲酒することによる健康リスク

「酒は百薬の長」という言葉があるように、アルコールは適量であれば、血行促進やストレスの発散などに効果的です。ただし、過度な飲酒が続くと、肝障害や膵炎、糖尿病・脂質異常症・高血圧症・高尿酸血症などの生活習慣病、がんなどの病気を発症しやすくなるほか、睡眠障害やうつ病などの精神異常をきたす場合もあります。

また、中性脂肪が肝臓に過剰にたまり、肝臓が肥大する「アルコール性脂肪肝」にも注意が必要です。脂肪肝はメタボリックシンドロームと合併して起こりやすく、放置すると肝臓の機能悪化、肝炎・肝硬変などの病気に進展します。

アルコール依存症を発症する可能性も

アルコール依存症を発症する可能性も

「自分は酒豪ではないから大丈夫」と思っていても、長期的かつ多量に飲酒する人であれば誰でもアルコール依存症になる可能性があります。

アルコール依存症とは、アルコールの過剰摂取により、アルコールに対して精神依存や身体依存を起こしている状態のことです。WHOの国際疾病分類第10版では、アルコール依存症は精神疾患に分類されています。飲酒量をコントロールできない、あるいは1日の大半を飲酒に費やしてしまうといったアルコールへの執着が強く、手指の震えや発汗、いらいら感などの離脱症状がみられることもあります。

毎日の飲酒習慣に加え、休日の朝酒や迎え酒をよくしてしまう人は、アルコール依存症になるリスクが高いと言えるでしょう。

休肝日を設けるべき理由

休肝日を設けるべき理由

休肝日を設けることは、飲酒の習慣化を防ぎ、前述した肝障害や脂肪肝、アルコール依存症などの健康被害の予防につながります。毎日の飲酒は肝臓に負担がかかるだけでなく、胃や腸などの消化管の粘膜も荒らしてしまうため、これら臓器の修復のためには週に何度か休肝日を設けることが必要です。

また、休肝日はアルコール依存症の早期発見にも役立ちます。休肝日にお酒への精神依存や身体依存が明らかである場合は、断酒を試みたうえで、精神科や心療内科で適切な治療を受けるなどの対策を取りやすいでしょう。

休肝日はどれくらいの頻度が適切?

アルコール健康医学協会によれば、休肝日は週に2日設けることが望ましいとされています。ただし、5日連続で飲酒したあとに休肝日を2日設けるのではなく、2~3日に1回の頻度で設けることが大切です。これによって肝臓にかかる負担の蓄積を避け、肝臓にかかったストレスを効果的に開放することができます。

飲酒が好きな人にとってはきついと感じるかもしれませんが、まずは休肝日を1日設けることから始めるなど、段階的に週2日の休肝日を目指しましょう。

休肝日のおすすめの過ごし方

休肝日のおすすめの過ごし方

毎日の飲酒が習慣化していると、禁酒した日は口がさみしくなったり、ストレスに感じてしまったりするかもしれません。休肝日をストレスなく穏やかに過ごすために、次の3つを意識してみてください。

炭酸水やノンアルコール飲料を飲む

お酒の代わりに炭酸水やノンアルコール飲料を飲むと、爽快感や満腹感を味わうことができます。禁酒が初めてなら、アルコール度数が1%未満で、お酒と同じ味や香りを楽しめるノンアルコール飲料をおすすめします。また、炭酸水であればカロリーを気にせず飲めるため、ダイエットにも効果的です。

運動を取り入れる

気を紛らわせたいときは、ウォーキングやジョギング、水泳などの運動を取り入れてみましょう。運動は肝臓への脂肪の蓄積を改善でき、脂肪肝の予防にもつながります。有酸素運動にプラスして、筋トレなどの無酸素運動を取り入れれば、より高い運動効果が期待できます。

栄養バランスの取れた食事をする

ダメージを受けた肝臓の回復には、魚介類や肉類、大豆製品、卵などの良質なタンパク質が有効です。ただし、ウィンナーやベーコンなどの加工品は塩分や脂質が多いため控えましょう。

また、栄養素の加工・貯蔵、胆汁の生成・分泌といった肝臓の働きをサポートするには、ビタミンとミネラルも欠かせません。野菜・きのこ・海藻などを積極的に取り入れながら、主食・主菜・副菜のバランスの取れた食事内容に見直すことが大切です。

週に2日は休肝日を設けてお酒と正しく付き合おう!

アルコールは依存性が高いため、毎日飲んでいると耐性がつき、摂取量が徐々に増えていく可能性があります。肝臓をいたわるために、週に2日は休肝日を設けながら、日々のアルコール摂取量をコントロールするように心がけてください。ノンアルコール飲料に変えたり、熱中できる趣味を見つけたりしながら、自分に合った方法で休肝日を過ごしましょう。

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監修者
中路 幸之助 先生

医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター
1991年に兵庫医科大学を卒業後、兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年 医療法人協和会に所属。2003年から現在まで、医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターで臨床に従事している。

専門分野はカプセル内視鏡・消化器内視鏡・消化器病。学会活動や論文執筆も積極的に行っており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員を務めているほか、米国内科学会(ACP)の上席会員(Fellow)でもある。

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