【医師監修】認知症の初期症状とは?もの忘れとの違い、セルフチェック項目も解説します

【医師監修】認知症の初期症状とは?もの忘れとの違い、セルフチェック項目も解説します

認知症とは、病気や障害が原因で、記憶や判断に関与する脳の認知機能が正常に働かなくなり、生活に支障をきたしている状態のことです。認知症は早期発見・早期治療によって進行を遅らせることができる場合があるため、初期症状と疑われる言動が現れたら、早めに医療機関を受診しましょう。本記事では認知症の原因となる病や症状、認知症ともの忘れとの違いを詳しく解説します。

  • 認知症とは?
    • アルツハイマー型認知症
    • 血管性認知症
  • 認知症の初期症状
    • もの忘れ
    • 感情の浮き沈み
    • 時間の感覚が鈍くなる
  • 軽度認知障害(MCI)からの移行
  • 認知症が進行すると現れる症状
  • 認知症の初期症状をセルフチェック
  • 認知症の初期症状に関するよくある質問
    • 認知症と加齢によるもの忘れの違いは?
    • 認知症の診断を受けるにはどこに行けばいい?
    • 認知症予防のために今からできることは?
  • 少しでも不安に感じたら早めに受診を

認知症とは?

認知症とは?

記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす認知症。日本では人口の高齢化とともに、認知症患者数も増加しており、2025年には65歳以上の5.4人に1人程度が認知症になると予測されています※。
※出典:内閣府「平成29年度版高齢社会白書」

認知症の原因となる病気には、主に下記があり、併発することもあります。

アルツハイマー型認知症

脳内に蓄積した特殊なタンパク質により神経細胞が破壊され、脳が萎縮することで発症します。もの忘れや軽度の失語から徐々に進行し、時間や場所の感覚がなくなる、人との関係性を把握できなくなるなどの症状が現れます。アルツハイマー型認知症は加齢や生活習慣病が原因で発症することが多いと考えられています。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血といった病気、または事故の影響で、脳の一部の神経細胞に十分な血液が送られず、脳細胞が死滅してしまうことで発症します。脳のどの部位が障害を受けたかによって症状は異なりますが、記憶障害だけでなく身体麻痺や言語障害が起きることもあります。

この2つのほかにも、レビー小体という特殊なタンパク質が脳内に蓄積されることで起こる「レビー小体型認知症」、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することによって発症する「前頭側頭型認知症」などが原因として挙げられます。認知症は高齢者に多く見られますが、若いうちに発症する「若年性アルツハイマー病」もあります。

認知症の初期症状

認知症の初期症状

認知症の初期段階では以下のような症状が現れます。

もの忘れ

人や物の名前が一時的に思い出せない、何を調べたかったのか忘れてしまったなどの「もの忘れ」は、年齢問わず誰にでも起きることです。しかし、何度も同じものを買ってしまう、料理の味付けを忘れてしまうなど、繰り返しの作業を思い出せない場合は、認知症の初期症状としてのもの忘れが疑われます。

感情の浮き沈み

認知機能が低下することで精神的に落ち込みやすくなります。今まで温厚だった人が急に怒りやすくなったり、アクティブだった人が家に籠りきりになったりと、まるで人格が変わってしまったような振る舞いが増えます。また、意欲がなくなるため趣味や日々の習慣への興味関心がなくなることも認知症の特徴です。

時間の感覚が鈍くなる

時間や日付の感覚が薄れ、約束の時間に合わせて準備をすることが難しくなります。早朝や夜中に外出しようとする、長時間待つことができなくなるなどの変化も時間の感覚が鈍くなっているサインです。

軽度認知障害(MCI)からの移行

もの忘れはあるものの日常生活への支障が軽度で、全般的な認知機能が正常に働いている状態を「軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)」と言います。

軽度認知障害から認知症に移行する人の割合は年間で約5~15%と言われていますが、軽度認知障害から正常な状態に戻る人の割合も同程度からそれ以上の数値で認められています※。症状を放置すると認知症に進行してしまうおそれがあるため、早い段階から適切な治療を受けることが重要です。
※出典:認知症疾患診療ガイドライン2017

認知症が進行すると現れる症状

認知症が進行すると現れる症状

認知症が進行すると現れる症状には、認知機能の低下によって起こる「中核症状」と、周囲の環境や本人の性格など様々な要因が絡み合って起こる「行動・心理症状(周辺症状)」があります。

中核症状の例

記憶障害 物事を覚えられなくなり、何度も同じ話をする。昔のことや人の名前を思い出せなくなる。
見当識障害 自分が置かれている状態や人との関係性、時間や季節がわからなくなってしまう。
実行機能障害 計画を立てて順序通りに実行することや、同時進行ができなくなる。
理解・判断力障害 物事の理解がスムーズにできなくなり、考えるスピードが遅くなる。

行動・心理症状(周辺症状)の例

行動症状 暴力・暴言・徘徊・拒絶・不潔行為など
心理症状 抑うつ・不安・幻覚・妄想・睡眠障害など

こうした症状が進行すると、探し物が見つからない際に人に盗られたと思い込んでしまう「物盗られ妄想」や、話のつじつまを合わせるために作り話をする「取り繕い」などが見られるようになります。

認知症の初期症状をセルフチェック

認知症の初期症状をセルフチェック

認知症の兆候として表れやすい行動には下記のようなものがあります。まずはご自身やご家族に当てはまる項目がないかチェックしてみましょう。

  • ・同じことを何度も話す・質問する
  • ・忘れ物や捜し物が増えた
  • ・以前はできた料理や買い物に時間がかかるようになった、手間取るようになった
  • ・お金の管理や簡単な計算ができない
  • ・ニュースなど世間の出来事に関心がなくなった
  • ・意欲が湧かず、趣味や日課などをやめた
  • ・怒りっぽくなった・疑い深くなった
  • 認知症は早い段階で対策できれば、進行を遅らせることができます。少しでも不安がある場合は、かかりつけ医や専門の医療機関に相談してみることをおすすめします。

    認知症の初期症状に関するよくある質問

    「ただのもの忘れ」と軽視してしまいがちな認知症の初期症状。進行を放置しないために、初期症状について正しく理解しておきましょう。

    認知症と加齢によるもの忘れの違いは?

    加齢によるもの忘れは体験したことの一部だけを忘れてしまいますが、認知症によるもの忘れは体験そのものを忘れてしまうという特徴があります。例えば、昨日食べた夕飯のメニューを思い出せないのが加齢によるもの忘れで、夕飯を食べたことすら思い出せなくなるのが認知症によるもの忘れです。

    ヒントがあっても全く思い出せないことが続く場合は認知症によるもの忘れを疑った方がよいかもしれません。

    認知症の診断を受けるにはどこに行けばいい?

    認知症の疑いがある場合は、まずはかかりつけ医に相談するのがおすすめです。既往歴を確認した上で、必要であれば専門の医療機関の紹介を受けられます。

    かかりつけ医がない場合やどこの医療機関に行けばいいかわからない場合は、自治体の高齢福祉課や地域包括支援センター、認知症疾患医療センターに相談するのもよいでしょう。また、いきなり専門の医療機関を受診するのは気が進まない場合は、脳ドックなどの検査から受診を始めてみるのもおすすめです。

    認知症予防のために今からできることは?

    生活習慣病は、認知症の大半を占めるアルツハイマー型認知症や血管性認知症の発症に深く関わっています。そのため、生活習慣病を予防することが認知症の予防にも繋がるでしょう。

    バランスのよい食生活や適度な運動を日頃から心がけることによって、生活習慣が改善されます。また、アルコールの過度な摂取も認知症発症の要因になるため、飲酒や喫煙もほどほどにすることが大切です。

    関連記事:生活習慣病の原因と5つの対策。毎日の心がけと備え

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    少しでも不安に感じたら早めに受診を

    認知症は、早期発見・早期治療で進行を遅らせることができます。だからこそ「もしかして認知症かも?」と思ったら放置せず、早めに対処することが大切です。まずはセルフチェックをおこない、複数当てはまった場合はなるべく早めに医療機関を受診しましょう。

    監修者写真

    監修者
    福井美典 先生
    福井内科医院勤務
    糖尿病内科、救急医療、総合内科、美容皮膚科、旅行医学、オーソモレキュラー栄養療法、産業医学

    からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱくの食事の大切さを、自ら栄養指導をおこなう。分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、からだの細胞を活性化させる治療法を取り入れている。

    野菜ソムリエの知識を生かし、栄養素が効率良く摂れる食べ合わせを意識したレシピを考案。美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。

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