【医師監修】未病とは?気軽にできる対策、フレイルとの関連も解説します

【医師監修】未病とは?気軽にできる対策、フレイルとの関連も解説します

2017年、国の「健康・医療戦略」で紹介され、広く知られるようになった「未病」という言葉。東洋医学では古くから使われている概念ですが、意味を知らない人も多いのではないでしょうか。本記事では「未病」の意味と注目されている背景、自分でできる未病対策について詳しく解説します。

  • 未病とは?
    • 日本未病学会の定義
    • 「未病」は東洋医学の基本的思想にも
  • 未病が注目されている理由
    • 高齢者は「フレイル」にも注意
  • 未病、フレイルの対策方法
    • 生活習慣の見直し
    • 自分の体を知る
  • 日ごろから自分の体と向き合い、未病対策で健康寿命を延ばそう!

未病とは?

未病とは?

未病とは、心身の状態を健康か病気かで二分するのではなく、「健康」な状態から「病気」の状態をグラデーションで捉え、その変化の過程を表す概念です。「未だ病まず」と送り仮名をつけると「病気ではないけれど、軽い予兆がある」という状態をより想像しやすいのではないでしょうか。

健康と病気の間には「健康から離れ病気に向かっている過程」と「病気に近い状態から健康を取り戻していく過程」があります。元気で自立した生活を送るためには、自分の体や心の状態がどの段階にあるのかを把握し、自らアクションを起こすことで生活の質を高めていくことが重要です。

日本未病学会の定義

日本未病学会は、次の①②のどちらも未病として定義しています。

自覚症状は「ない」が、検査では異常が見られ、放置すると重症化するもの
→例:肥満、境界域高血圧、高脂血症、脂肪肝、B型肝炎ウィルスのキャリア など

自覚症状は「ある」が、検査では異常が「ない」状態
→例:冷え、だるさ、頭重感、疲れやすい・疲れがとれない、おなかの調子が悪い、体力が落ちた、食欲不振 など

これに対し、病気は「自覚症状があり、検査でも異常がある状態」と定義されています。

「未病」は東洋医学の基本的思想にも

未病は、もともと中国の漢の時代に書かれた『黄帝内経』に見られる言葉です。「聖人は已病を治さずして未病を治す(素晴らしい医師は病気になってからではなく、未病状態から治療をはじめる)」という一節にも登場し、これは東洋医学の基本的思想にも含まれています。

未病が注目されている理由

未病が注目されている理由

未病が注目されるようになった背景には、日本の超高齢化社会化があります。

厚生労働省によると、男性の平均寿命は81.05歳、女性の平均寿命は87.09歳※1。日本は世界有数の長寿大国で、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)も長い傾向にありますが、それでも平均寿命と健康寿命の間には約10年※2のギャップがあると言われています。
※1 厚生労働省 令和4年簡易生命表より
※2 2019(令和元)年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳

このため、長い老後のQOLの維持・向上、健康で自立した日々を長く送れるようにすることが重要という観点から、病気になる前の段階である「未病」の対策が注目されるようになりました。

高齢者は「フレイル」にも注意

加齢によって、心身の活力が低下した状態をフレイル(虚弱)と言います。フレイルと未病は心や体が弱っている段階を示す点で似ていますが、未病は「健康」と「病気」の中間であるのに対し、フレイルは「健康」と「要介護」の中間である点で枠組みが異なります。

高齢の家族に次のような傾向が見られる場合には、フレイルの前兆かもしれません。

  • あまり歩かない、歩けない
  • 外出や人とのつながりを避けている
  • 掃除や洗濯などの日常の行動が面倒になる
  • 食事の際にむせたり、食べこぼしたりする

これらのささいな衰えが積み重なると、筋力や心身の活力が低下し、病気や要介護の状況を招きやすくなります。フレイルには可逆性があり、適切な対策に取り組むことで健康な状態に戻ることができると考えられているため、未病と同様、早めに対策を打つことが肝心です。

未病、フレイルの対策方法

未病、フレイルの対策方法

実際にどのように未病対策を始めればよいのでしょうか?ここからは、未病対策のアクションを具体的に紹介します。

生活習慣の見直し

食事や運動、睡眠などの生活習慣の乱れは、様々な体の不調を引き起こす原因になります。このことに着目した神奈川県は、「食・運動・社会参加」を未病改善の柱として掲げ、地域の住民に対策を呼び掛けています。神奈川県が推奨する対策の一例を見てみましょう。

バランスの良い食生活を心がける

神奈川県は「食」における未病改善策の一つとして「医食農同源」を推進しています。医食農同源とは「病気の治療も日々の食事も、健康を保つためには欠かせない」ことを意味する“医食同源”に、地元で獲れた農作物を食事に取り入れる“地産地消”の概念を掛け合わせた健康観のこと。

未病対策としては、野菜や果物などの農作物はもちろん、肉や魚などのタンパク質を多く含む食材をしっかりと摂ることがポイントです。地元で獲れた旬の食材を積極的に使うなどの工夫をしながら、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。

関連記事:【管理栄養士監修】理想のPFCバランスや食事とは?

オーラルフレイル対策に取り組む

健康な口腔機能を保つことも食事を楽しむために欠かせない要素です。特に高齢者においては、食べこぼしが多くなる、堅いものが噛めないなどの「オーラルフレイル(ささいな口の機能の衰え)」が、身体機能の低下や栄養状態の悪化を招くこともあります。オーラルフレイルの予防や改善は健やかで自立した暮らしを長く続けられるカギとなるため、意識して取り組みましょう。

口や舌の動きをスムーズにするためには、口の体操で筋力を鍛えることがおすすめです。

  • 口をすぼめて「ウー」、横に開いて「イー」と発声することを数回繰り返す
  • ゆっくり大きく口を開け10秒キープした後、しっかり口を閉じて10秒休憩する
  • 早口言葉を言う

上記のように、気軽にできるトレーニングを習慣にしてはいかがでしょうか。

運動など、意識して体を動かす

スポーツやエクササイズなど体を動かす時間を作りましょう。適度な運動は質の高い睡眠にもつながります。寝転んだり座ったりする時間を減らし、足踏みや体操などの室内でもできる運動を取り入れるだけでも、心身の機能を維持することに役立つでしょう。

社会参加で周囲とコミュニケーションをとる

社会とのつながりを持つことも未病改善の重要な取り組みです。ボランティア活動や趣味のサークルに参加し、他者と交流する機会を持ちましょう。直接顔を合わせなくても、電話やメールで人と交流を持つことで、メンタルヘルスを健康に保つことができます。

自分の体を知る

自分の体を知る

未病のような体の不調に気付くには、日ごろから自分の体と向き合い、自分の体を知る機会を持つことが大切です。体重計や血圧計での健康管理のほか、スマートウォッチなどのウェアラブル端末やスマートフォンなどのアプリケーションなどを活用すれば、日々の健康状態を自動的に記録でき、不調に気付きやすいというメリットもあります。

体の不調を感じた場合は放置せず、十分に休息を取ったり、必要に応じて医師や薬剤師に相談しましょう。健康診断で検査値の異常を早期発見できれば、健康に向けたアクションを起こしやすくなるため、自覚症状がなくとも、定期的に健康診断を受けることも大切です。

関連記事:【医師監修】これが知りたかった!高血圧の予防・改善につながる食事のススメ

日ごろから自分の体と向き合い、未病対策で健康寿命を延ばそう!

自立した状態で長く生きるためには、未病対策が欠かせません。日ごろから自分の体の声に耳を傾けながら、定期的に健康診断を受けて、心身の健康を保ちましょう。

監修者写真

監修者
福井美典 先生

福井内科医院勤務
糖尿病内科、救急医療、総合内科、美容皮膚科、旅行医学、オーソモレキュラー栄養療法、産業医学
からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱくの食事の大切さを、自ら栄養指導をおこなう。分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、からだの細胞を活性化させる治療法を取り入れている。
野菜ソムリエの知識を生かし、栄養素が効率良く摂れる食べ合わせを意識したレシピを考案。美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。

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