日々の暮らしで、天気の変化が体調に影響を及ぼすことがあります。なかでも気圧の変動によって引き起こされる「天気痛」は、多くの人を悩ませる不快な症状のひとつでしょう。本記事では、天気痛の原因と具体的な対処法、さらに日常生活で実践できる予防策について詳しく解説します。
天気痛とは
天気痛(気象病)とは、気圧や気温、湿度などの変化に伴って発生する身体の痛みや不快な症状のことを指します。頭痛や関節痛、筋肉痛などの症状が現れるのが一般的です。
天気痛が起きるメカニズム
天気痛の主な原因は、気圧の変化といわれています。特に、体の平衡感覚をつかさどる内耳が敏感な人ほど天気痛が起こりやすい傾向にあります。
内耳とは、体の平衡感覚をつかさどる器官です。内耳の前庭神経(ぜんていしんけい)が気圧の変動に過剰に反応し、その情報が脳に伝わると自律神経のバランスが乱れてしまいます。それによって、さまざまな身体の不調が生じるのです。
どんな時に起きやすい?
低気圧で湿気の多い梅雨の時期や、夏から秋にかけての台風が発生しやすい時期には気圧の変化が起こりやすいため、天気痛が生じやすいといわれています。また、朝晩の寒暖差が激しい季節の変わり目も、身体の不調が起きやすい時期です。
天気痛が起きるタイミングには個人差があり、雨が降る数日前から症状が出る人もいれば、雨が降る直前に体調が悪くなる人もいます。
女性の場合は、月経などによるホルモンバランスの変化に気圧の影響が加わることで、さらに自律神経が乱れやすくなり、天気痛が起こりやすいと考えられています。特に女性ホルモン量が大きく減少する更年期世代は、天気痛に悩まされやすいといわれています。
天気痛の症状
ここからは、代表的な天気痛の症状について解説します。
頭痛
気圧の変化により、内耳の前庭神経が過剰に興奮すると、そのそばの三叉神経(さんさしんけい)も刺激を受けて、セロトニンなどの脳内の神経伝達物質が血液中に放出されます。これにより脳の血管が拡張して頭痛を引き起こすと考えられています。日頃から片頭痛や緊張型頭痛のある人は、より症状が悪化しやすい傾向にあります。
関節痛
頭痛と並んで、天気痛の代表的な症状として挙げられるのが関節痛です。
気圧の変化が起きると、関節内の圧力や自律神経バランスが崩れ、炎症が悪化しやすくなります。特に、関節リウマチや変形性関節症など、関節に炎症をきたす持病がある人は、気圧の変化により症状が悪化しやすいといわれています。
めまい
気圧の変化が内耳に影響を及ぼすと、めまいが起きることがあります。
めまいは、体のバランス感覚をつかさどる前庭神経の過剰な興奮によるものです。天気痛の症状としては、自分の周囲の壁や天井がぐるぐると回って見える「回転性めまい」が多いといわれています。
倦怠感
天気の変化により、全身の倦怠感や疲労感、強い眠気、むくみ感をきたすことがあります。これも天気痛の症状の一種で、自律神経が天候の変化に対応するために過剰にはたらきすぎてしまうことが原因だと考えられています。
気分の落ち込み
天気の変化によって、「天気うつ」と呼ばれる症状が起きるケースがあります。天気うつになると、ささいなことでもイライラしたり、不安感や気分の落ち込みが強くなったりします。特に、低気圧の日に起きやすいといわれています。
今すぐできる!天気痛の対処法
ここからは、ご自身ですぐにできる天気痛の対処法を4つご紹介します。
鎮痛剤を服用する
天気痛の症状が強い場合は、市販の鎮痛剤を適切に使用するとよいでしょう。イブプロフェンやアセトアミノフェン配合の鎮痛剤ならば、頭痛や関節痛の緩和が期待できます。
また、低気圧など、気圧の変化で起きるさまざまな不調に対する薬も販売されています。天気痛に効果がある市販薬のほとんどに、体内の水分バランスや自律神経の乱れを整える漢方薬「五苓散」が配合されています。市販薬を使用する場合は、必ず用法・用量を守り、長期間の使用は避けてください。
体を温める(冷やす)
症状に応じて、体を温めたり、冷やしたりするのも効果的です。
肩こりや筋肉痛、気持ちの落ち込みがある場合は体を温めましょう。温かいタオルを首や腰など痛みのある部分に当てたり、ぬるめの湯船にゆっくりと浸かったりすることで血行が促進され、筋肉の緊張を和らげ、気持ちをリラックスさせることができます。
反対に、頭痛や関節痛がひどい場合は、痛む部分を冷やしましょう。湿布や保冷剤などを使用して炎症や血管の拡張を抑えることで、痛みの軽減が期待できます。
マッサージやストレッチをする
軽いマッサージやストレッチは、筋肉の緊張をほぐし、血流を改善するため、天気痛による症状の緩和や予防につながります。手のひらや指を使って耳まわりや首をやさしくほぐすマッサージや、肩や背中、脚などの大きな筋肉を伸ばすストレッチがおすすめです。
自律神経のバランスを整えるヨガも、天気痛の改善に効果が期待できます。
深呼吸をする
気圧などの変化により自律神経が乱れると呼吸が浅くなり、ストレスを感じやすくなってしまいます。深呼吸を何度か繰り返し行って、副交感神経を刺激し、からだと心をリラックスさせてあげましょう。スマートフォンやパソコンなどから離れて、深呼吸を行う時間を設けるのもおすすめです。
天気痛の予防策
ここからは、天気痛の症状を予防する方法について解説します。
規則正しい生活を送る
気圧の変化の影響を小さくするためには、日ごろから自律神経のバランスを整えておくことが重要です。起床・就寝時間を一定に保ち、起きたら太陽の光を浴びて体内時計をリセットして朝ごはんを食べましょう。ウォーキングなどの軽い運動、毎日の入浴も効果的です。
バランスの良い食事を心がける
自律神経を整える方法として、食事にも気を付けるとよいでしょう。なるべく1日3食、決まった時間に食事を摂ることを心がけ、主食・主菜・副菜を組み合わせて栄養バランスが偏らないようにしましょう。
特に天気痛の頭痛対策には、マグネシウムが豊富に含まれる豆腐などの大豆製品やナッツ類、鉄分が豊富に含まれるレバーやホウレンソウなどの摂取をおすすめします。また、消化器官に負担のかかる脂っこいものや加工食品はなるべく避け、食物繊維や乳酸菌などを含む発酵食品などを積極的に摂って、腸内細菌のバランスを整えることも大切です。
症状を記録する
天気痛が頻繁に起こる場合は、天気や気圧の状態、症状の度合い、症状がひどくなったタイミングなどを記録しておきましょう。記録を続けると、天気の変化と心身の不調がどのように関係しているかを確認できるため、体調が悪くなりそうなタイミングで鎮痛剤を服用したりなどの予防ができるようになります。
正しい予防・対処法で天気痛の症状を緩和しよう
天気痛は誰にでも起こりうる心身の不調です。天気痛の起こるタイミングをチェックして、適切な対処をすることで、症状を緩和・軽減させることができます。また、日ごろの生活習慣を見直し、心身ともに健やかな状態の維持を目指しましょう。
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