夏バテの症状
「食欲がわかない」「何となくやる気が出ない」など、暑い時期に現れる「夏バテ」の症状。夏バテで現れる症状は、人によって様々です。代表的な症状としては、体の倦怠感(だるさ)、食欲不振、寝付きの悪さなどが挙げられます。
情報掲載日:2023年6月9日
夏バテとは、高温、多湿など夏ならではの環境で体力を消耗することや、急な暑さや冷房使用により自律神経の働きが乱れることで現れる、体の不調の総称です。今回は夏バテが起こるメカニズムや夏バテの症状、夏バテになってしまった時のセルフケア方法まで詳しく解説します。
「食欲がわかない」「何となくやる気が出ない」など、暑い時期に現れる「夏バテ」の症状。夏バテで現れる症状は、人によって様々です。代表的な症状としては、体の倦怠感(だるさ)、食欲不振、寝付きの悪さなどが挙げられます。
夏バテは熱中症と混同されがちですが、熱中症は体温の上昇や脱水によって症状が引き起こされるのに対し、夏バテは高温、多湿の環境で体力の消耗や自律神経の乱れが起きることにより現れる点が異なります。
暑い時や運動をした時、人間の体は汗をかいて体の熱を外に逃がそうとします。この働きがうまく機能しなくなり、体温の上昇や脱水によって引き起こされるのが「熱中症」です。
熱中症に至らなくても、体温調節には多くのエネルギーを消費するため、食事や睡眠などで体力を回復しなければなりません。しかし「暑さで食欲がわかない」「熱帯夜で寝付けない」などの状況が重なると、疲労やだるさを感じやすくなって「夏バテ」が起こります。
また、屋内では冷房を使うことで快適な室温をキープできますが、夏は涼しい室内と暑い室外を行き来することが多く、涼しい日が続いた後に急に暑くなることもあり、温度変化が激しい季節です。こうした温度変化によって、自律神経の働きが乱れ、不調を感じやすくなることも夏バテの一因と考えられています。
夏バテになりやすい生活習慣の一例を示します。当てはまっていないか、セルフチェックしてみましょう。
これらのような不適切な生活習慣があると、暑さで消費した体力を十分に回復できず、夏バテを起こしやすくなります。
様々な原因によって起こる夏バテ。ここからは自分でできる夏バテの予防法や対策について紹介します。
先に紹介した生活習慣の乱れに気を付けながら、睡眠のリズムを整えることにも意識を向けましょう。入浴はシャワーで済ませがちですが、寝る1時間半から2時間ほど前にぬるめ(40℃程度までが目安)のお湯に10~15分程度浸かることがおすすめです。体をおだやかに温めることで「深部体温」が一時的に上がり、寝るタイミングでほどよく下がるため、入眠しやすくなります。
夜の寝苦しさを緩和させるために、寝具やパジャマは通気性や速乾性のあるものを選ぶと良いでしょう。エアコンと合わせて扇風機やサーキュレーターなどを使うと、冷たい空気を効率よく循環させられます。ただし、体に直接風が当たると、冷え過ぎる恐れがあるため、風向きには注意してください。
夏場は、厳しい暑さで他の季節ほどの運動量を確保できず、食欲もわきにくいため体力が低下しがちです。暑い時間帯を避けた適度な運動で、体力や睡眠の質の向上を図りましょう。運動により、乱れた自律神経のバランスも整えられます。
いきなり激しい運動をするのではなく、「涼しい夜は一駅分歩く」「エスカレーターではなく階段を使う」など、日常生活に取り入れやすく、続けやすい軽い運動からはじめてください。
室内外の温度差が大きいと、自律神経のバランスが乱れる原因にもなります。外出時は帽子や日傘を着用して直射日光を避け、吸湿性・速乾性のある風通しがよい衣服などで熱を逃がす工夫をしましょう。
エアコンの温度設定は、低すぎても高すぎても体に負担をかけるため26~28℃を目安に調整しましょう。職場や外出先など、温度調節が難しい場合は、上着やひざかけで対策することもおすすめです。
汗をかくと、水分と塩分が同時に失われます。喉が渇く前に、定期的に水分・塩分を補給するよう心がけましょう。ナトリウムなどのミネラルを含む経口補水液などであれば、水分・塩分を一度に補給できます。熱中症の予防としても有効です。
外出時や運動時はもちろんですが、朝起きた時や入浴の前後は意識して水分補給し、脱水を防ぎましょう。睡眠時や入浴時には、かなりの水分が失われるためです。年齢を重ねると喉の渇きは自覚しづらいため、積極的に水分補給することを心掛けましょう。
なお、冷たい飲み物は胃腸を冷やしてしまい、腹痛や消化不良を招くこともあります。炎天下で過ごした後などの体を冷やしたい場合を除き、普段の水分補給は常温程度がおすすめです。また、アルコールやカフェインの入った飲料には利尿作用があるため、水分補給にならない点も、ぜひ覚えておきましょう。
夏バテ対策には、バランスのよい食事がおすすめです。1日3食「主食(糖質)+主菜(たんぱく質)+副菜(ビタミン・ミネラル)」を意識して食べましょう。
特に、ビタミンB1を積極的に摂ってみてください。ビタミンB1が不足すると、せっかく摂取した栄養をエネルギーに変換できなくなってしまうためです。
ビタミンB1は豚肉やうなぎ、大豆、玄米、ほうれん草、ごまなどに多く含まれています。また、殺菌効果や疲労回復効果のあるアリシンを含む食材(にんにく、ニラ、ねぎ、玉ねぎ、生姜など)と一緒に摂ると、ビタミンB1を効率よく吸収できます。
夏バテ予防には、クエン酸を含むレモンやグレープフルーツ、オレンジ、梅干しなども栄養補給に活用しましょう。クエン酸は疲労の原因となる乳酸の排出を促します。
夏バテ解消には生活習慣の見直しが不可欠です。食事や睡眠が十分か、運動不足ではないかなど、直近の生活を確認し、改善を図りましょう。
食欲がない場合は、スパイスや香味野菜などを積極的に使い、料理の味付けを工夫してみるのもひとつの方法です。食欲不振が続いている場合はサプリメントや栄養ドリンクなどで、栄養を補うことも考えましょう。
軽いマッサージやツボ押しなどは、自律神経のバランスを整えるのに有効です。入浴時や就寝前などに試してみましょう。
ただし、長期間不調が続く場合や、体調不良で食事が摂れない場合などは、医療機関を受診してください。
ある程度自分で予防・対策できる夏バテ。食欲がない場合は、市販のビタミン剤や栄養ドリンクなども活用して体力回復を図りましょう。疲れを感じている時は無理をせずゆっくり休むことも大切です。食事・睡眠などの生活習慣に気を配り、高温、多湿な日本の夏を乗り切りましょう。
監修者
福井 美典 医師
(糖尿病専門医・抗加齢医学専門医・救急科専門医・総合内科専門医・栄養療法医・美容皮膚科医)
からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱくの食事の大切さを、自ら栄養指導をおこなう。分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、からだの細胞を活性化させる治療法を取り入れている。
野菜ソムリエの知識を生かし、栄養素が効率良く摂れる食べ合わせを意識したレシピを考案。美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。
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