皮膚のバリア機能が低下しやすい秋冬に起こりやすい「手荒れ」。ケアをせずに放っておくと手湿疹を引き起こす可能性もあり、かゆみや痛みを伴って悪化するため、早めの対策が肝心になります。
本記事では、手荒れの症状や原因、発症しやすい人の特徴、手荒れの対処法および予防法を詳しく解説します。
手荒れってどんな症状?
手荒れとは、手や指が乾燥によりカサカサしたり、赤みを伴ったりしている状態のことです。外部刺激から皮膚を守るバリア機能が低下した時に起こりやすく、乾燥などのダメージを受けやすい秋冬に発症する人が多くいます。
軽度の手荒れであればハンドクリームで保湿することで改善できますが、放っておくと、ひび割れ、水ぶくれ、皮めくれ、かゆみや痛みなどの症状とともに悪化します。
手荒れの種類と各症状
ひとくちに手荒れといっても症状はさまざまあり、手荒れの進行度によって現れる症状が異なります。初期段階では「ひび」や「あかぎれ」、悪化すると赤み、かゆみを生じて「手湿疹」を発症します。
【ひび、あかぎれ】
手荒れでよく起こる「ひび」や「あかぎれ」の症状は、乾燥により角層が硬くなることが主な原因です。乾燥した肌に亀裂が起こると「ひび」になり、それが悪化すると「あかぎれ」に進行します。あかぎれは亀裂が深くなり、痛みや出血を伴うこともあります。
【手湿疹】
手湿疹は、手や指に炎症やかゆみが起こって湿疹が現れた状態です。主な原因として、「慢性刺激性皮膚炎」「アレルギー性皮膚炎」「接触皮膚炎」「アトピー型皮膚炎」の4つが考えられます。
・慢性刺激性皮膚炎
慢性刺激性皮膚炎は、手肌が常に外部刺激のダメージを受けることで生じる皮膚炎です。手洗いの機会が多かったり、水を使用したりする機会が多い医療従事者や美容師、調理師に起こりやすいと言われています。
水に触れている時間が長く、石けんや洗剤をよく使うという環境下では、手肌のうるおいが奪われやすく、皮膚のバリア機能が低下するために手荒れを引き起こします。そのため、うるおいが不足しやすい冬に悪化することが多く、亀裂、ささくれ、赤みやかゆみ、じくじくとした湿疹、痛みなどの症状が現れます。
・アレルギー性皮膚炎
特定の物質にアレルギー反応を起こした場合、手肌にかゆみや発疹、炎症となって現れることがあります。石けんやシャンプー、消毒液、ゴム手袋などを原因に発症するケースが多く、とくにバリア機能が低下している時はアレルゲンが皮膚に侵入しやすくなることで症状が出やすくなります。
・接触皮膚炎
食物、植物、動物、小麦、穀類、天然ゴム製品などのアレルゲンが原因となり、即時型アレルギーとして発症する手湿疹です。主な症状としては、皮膚の内側から盛り上がった発疹やかゆみ、灼熱や痛痒さなどが挙げられます。アレルゲンに接触しなければ数時間以内に症状がなくなるのが特徴であり、アレルギー性皮膚炎との違いです。
・アトピー型皮膚炎
アトピー型皮膚炎のある人は、皮膚のバリア機能が低下しやすく、強いかゆみを伴う手湿疹を発症するケースが多い傾向にあります。
手荒れじゃないかも!症状の似た疾患
一生懸命ケアしても手荒れや手湿疹が改善しないなら、他の疾患が原因かもしれません。手指の皮膚トラブルにはさまざまな種類がありますが、手荒れ・手湿疹に症状が似ている疾患として以下のようなものがあります。
・汗疱、異汗性湿疹(いかんせいしっしん)
汗疱は、手のひらや足の裏に1~2mm程度の水泡ができる皮膚疾患です。原因はいまだ解明されておらず、かゆみを伴い、再発を繰り返します。また、汗疱を発症している部分に薬剤や摩擦などの刺激が加わり、湿疹に進行したものが異汗性湿疹です。炎症により激しいかゆみやただれが伴い、手や足に広範囲に発生します。
・手白癬(てはくせん)
白癬は一般的に「水虫」と呼ばれており、白癬菌というカビが原因で起こる感染症です。手白癬になると、手のひらを中心にかゆみを伴う水泡ができるほか、皮膚が厚化し、皮がむけます。
そのほか、手荒れや手湿疹に似た症状として、肝硬変などの症状の一つである手掌紅斑(しゅしょうこうはん)が挙げられます。手掌紅斑は手のひらや親指と小指のつけ根の部分が赤くなり、手湿疹と間違われやすいため要注意です。万が一、肝疾患の症状に心当たりがある場合は、早急に医療機関を受診してください。
手荒れが起こる原因
手肌は他の皮膚と比べ、バリア機能が低下しやすい傾向にあります。バリア機能とは、外部刺激に対する皮膚の防御力のことで、この役目を果たしているのが皮膚表面にある角層です。さらに、皮脂膜が皮膚をコーティングするように覆うことで、皮膚は水分を含んで、みずみずしい状態を保っています。
しかし、乾燥や気温の低下、水に触れる機会が多いなどの外部刺激が加わると、皮脂膜が取り除かれ、バリア機能が低下します。とくに手は皮脂腺がなく皮脂膜が作られにくいため、皮脂膜の再生を待つ間、外部刺激を受けやすくなった手肌は手荒れを引き起こしやすくなります。
手荒れになりやすい人の特徴
手荒れの原因には外的要因と体質が大きく関係し、とくに以下の特徴を持つ人は手荒れに悩まされやすいと考えられます。
・水仕事や手洗いの機会が多く、水に触れる頻度が高い人
水に触れると手肌の皮脂は流されやすいため、家事で皿洗いや洗濯などを行う主婦のほか、カラー剤などの化学物質を扱う理容師・美容師も手荒れのリスクは高くなります。また、アルコール消毒を頻繁に使う人も注意が必要です。アルコール消毒は、アルコールと一緒に手肌のうるおいまで蒸発させるため、バリア機能を低下させ、手荒れの原因となります。
・アレルギーやアトピー性皮膚炎の人
特定の化学物質やタンパク質にアレルギーを持っていると、それに反応して手荒れを引き起こします。また、アトピー性皮膚炎の人はもともとバリア機能が低下しやすいため、外からの刺激に弱く、手荒れを起こしやすくなります。
手荒れになったら?自宅でできる対処法
手肌に強い赤みやかゆみを伴う場合は皮膚科の受診をおすすめしますが、軽度の手荒れであればセルフケアによって改善が期待できます。
ここでは、市販で購入できるアイテムで手荒れをケアする対処法を紹介します。
保湿剤でこまめに保湿する
粉吹きやカサつきが気になる手荒れ初期は、ハンドクリームやワセリンなどの保湿剤を塗ることで症状が落ち着きます。
手の乾燥が気になるならヒアルロン酸やグリセリン、セラミドなどの保湿成分、ひびやあかぎれのある手に使う時は抗炎症成分配合のものがおすすめです。
【ハンドクリームの効果的な塗り方】
1回の目安量は「人差し指の指先から第1関節まで」。症状がひどい場合は、「第2関節まで」の量を使うようにしましょう。手の甲にハンドクリームを取ったら、両手の甲をこすり合わせてクリームを広げます。両手の親指から小指までていねいになじませ、爪の周り、指の股にもしっかりと塗り込んでください。
手のべたつきが気になる場合は、綿の手袋をして手を保護しておくのがおすすめです。
ステロイド剤を正しく使用する
赤みやかゆみ、湿疹が出ている場合、ステロイド剤を使って炎症を抑える方法もあります。市販で購入できるステロイド剤には効果の強弱に違いがあるため、薬剤師に症状について相談しながら、最適な薬を選んでもらうようにしましょう。
ステロイド剤を選ぶ際、患部をしっかり保護したい場合は「軟膏タイプ」、べたつきが嫌なら「クリームタイプ」がおすすめです。
ただし、ステロイド剤の長期使用は副作用が起こりやすくなるためNGです。また、予防のために症状の出ていない場所に使用することも絶対に避けてください。
手荒れに効果的な予防法
手荒れの主な原因は、手肌の皮脂やうるおいが奪われ乾燥してしまうことです。ここでは、日頃から手肌を乾燥させないために意識したい3つの予防法を紹介します。
水仕事の時はゴム手袋を使用する
皿洗いなど、水に触れる時間が長い場面では、ゴム手袋を使うことをおすすめします。とくに油汚れにも対応した洗剤は洗浄力が強力なため、素手で触れることは極力避けましょう。また、ゴム手袋の下に綿の手袋をはめておけば、ムレを予防できます。
低刺激性の石けんやハンドソープを使う
洗浄力の強すぎる石けんやハンドソープも、手肌に必要な皮脂やうるおいを奪って乾燥を進めてしまいます。敏感肌用のアイテムなど肌にやさしいものを使用し、ぬるま湯で、泡で洗うよう意識することが大切です。
手洗い後はしっかり保湿する
手が濡れたままだと乾燥して手荒れが悪化しやすくなります。清潔なタオルでしっかりと水気を拭き取り、保湿剤やハンドクリームで速やかに保湿してください。
手荒れしている時にしてはいけないこと
かゆみがひどいとついつい掻きむしってしまいがちですが、手荒れや手湿疹は掻くと悪化してしまうため、市販のかゆみ止め薬を服用するなど、掻かないように対策を行いましょう。また、ストレスがかゆみの原因となる場合もあるため、ストレスを溜めないように没頭できる趣味などを見つけることも大切です。
手荒れは悪化する前に早めにケアを
軽度の手荒れであればセルフケアで改善が期待できますが、もし症状が長引く場合は皮膚科専門医に相談するようにしましょう。症状に合わせた適切な治療が受けられるため、症状の重い手荒れも早めの改善を見込めるでしょう。
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