【医師監修】これが知りたかった!高血圧の予防・改善につながる食事のススメ

【医師監修】これが知りたかった!高血圧の予防・改善につながる食事のススメ

健康診断や医療機関の受診で血圧が高めと診断されても、食事の際にどんな注意をすればよいかわからず悩んでしまうこともあると思います。

血圧を上げないようにするには、塩分や脂質を抑えつつ、カリウムやマグネシウムなどを含んだ食材を取り入れることが大切です。今回は、高血圧を予防・改善するための食事のポイントについて詳しく解説します。

  • 高血圧のメカニズム
    • 高血圧とは
    • 現代人に多い高血圧の原因
  • 高血圧の人が気をつけたい食事
    • 塩分を多く含む食品、メニュー
    • 脂質の多い食材、メニュー
    • 過度な飲酒
  • 高血圧改善のために摂りたい食事
    • 野菜、果物でカリウムを補給
    • 海藻やナッツ類、豆類でマグネシウムを摂取
    • ごぼうやこんにゃくなどで食物繊維を摂取
  • 高血圧にならない・悪化しないための食事の工夫
    • 香りを意識
    • 素材のうまみを活かす
    • 新鮮、旬の食材を選ぶ
  • 高血圧改善のために日常生活で心がけること
    • こまめな水分補給
    • 適度な運動
  • 食事を工夫して高血圧を予防・改善しよう

高血圧のメカニズム

高血圧のメカニズム

様々な病気を引き起こすきっかけとして知られる「高血圧」。ここでは高血圧のメカニズムについて見てみましょう。

高血圧とは

そもそも血圧とは、心臓の収縮で送り出された血液によって、血管の内側にかかる圧力のことです。血圧は心臓がポンプのように縮んで血液を送り出した時に高くなり、その最大値を計測したものが「収縮期血圧」です。一方、血液が戻ってきて心臓が拡張し、血管の内側にかかる圧力が最も低下した時の数値を「拡張期血圧」と言います。

高血圧とは、血圧が高い状態が慢性的に続く状態のことです。具体的な基準として、以下のどちらかが当てはまると高血圧と診断されます。

収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上
拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上

※医療機関などで血圧を測定する「診察室血圧」での値

高血圧と動脈硬化の関係

血管がゴムのように柔らかければ、血液の流量に合わせて柔軟に伸縮し圧力を調整できますが、加齢などによって硬くなると持続的な圧力がかかることに。すると、血管の柔軟性が失われる「動脈硬化」が進行し、脳卒中や心筋梗塞などの病気のリスクとなります。

血管の柔軟性は加齢のほか、喫煙による血管のダメージや食生活の乱れによる血液中の悪玉コレステロールの増加など、生活習慣とも密接な関連があります。

塩分の摂りすぎが良くない理由

人の体の中では水分と塩分の濃度が一定に保たれています。食塩(塩化ナトリウム)の形で摂取する「ナトリウム」はその調整に欠かせないミネラルですが、摂りすぎると、一時的に高くなった塩分濃度を下げるために、体内の水分量が増加します。この時心臓に送り込まれる血液の量が増え、血管にかかる圧力、つまり血圧が上昇してしまうのです。

現代人に多い高血圧の原因

日本人が悩む高血圧の多くは、甲状腺や副腎などの病気が引き起こす「二次性高血圧」と異なり、遺伝的素因(体質)や食塩の過剰摂取、肥満などさまざまな要因が組み合わさって起こる「本態性高血圧」です。

本態性高血圧は生活習慣の乱れによって引き起こされるケースもあります。塩分の摂りすぎのほか、睡眠不足、過度な飲酒、運動不足などの生活習慣も血圧に影響を与えるため、高血圧と診断されたら、日々の生活の改善点を探してみましょう。

高血圧の人が気をつけたい食事

高血圧の人が気をつけたい食事

ここからは高血圧の人が食事でどのようなことに気をつけるべきか見ていきます。

塩分を多く含む食品、メニュー

ラーメンやうどんなどの麺類や味噌汁は、塩分が多く含まれています。汁物は一日一杯を目安にして、麺類の汁は飲み干さないなど意識的な減塩を心がけましょう。

以下のような加工食品も塩分が多いため、ほかの食材と置き換えるなどでメニューを工夫してみてはいかがでしょうか。

  • ハム
  • ソーセージ
  • ちくわ
  • かまぼこ
  • 漬物

脂質の多い食材、メニュー

ハンバーグ、油を多く使用する天ぷら・フライには脂質が多く含まれています。特に肉の脂にはコレステロールを増やす「飽和脂肪酸」が含まれているので、摂りすぎには注意が必要です。

脂質の摂りすぎで肥満になると、脂肪細胞が分泌する物質による血管の収縮や、過食や塩分の取りすぎによる体液量の増加などが起こり、血圧が上昇しやすくなります。高血圧の予防・改善のためには、脂質の多い食事を避けることが大切です。

過度な飲酒

過度のアルコール摂取は肥満や高血圧など生活習慣病のリスクを高めるため、適量にとどめましょう。一日当たりの飲酒量は日本酒一合、ビール大瓶一本が目安とされています。

高血圧改善のために摂りたい食事

高血圧改善のために摂りたい食事

食材の中には、高血圧の改善に効果が期待できるものもあります。

野菜、果物でカリウムを補給

カリウムはナトリウムと同様、体液のバランスを調整するのに欠かせないミネラルです。ナトリウムを体の外に出しやすくする作用があり、摂取すると血圧の低下に繋がります。カリウムが不足すると血圧の調節が難しくなるだけでなく、食欲不振や不整脈などの症状が現れる恐れもあるので、日々の食事ではカリウムを含む野菜や果物を意識して摂りましょう(※)。

カリウムはバナナやほうれん草、アボカドなどの食材に多く含まれています。ただし、バナナは比較的気軽に食べられる果物である一方、糖質も豊富に含まれているので、摂りすぎには注意しましょう。

※腎臓の病気や加齢などによって腎機能が低下している場合はカリウム摂取の制限が必要な場合があります。不安がある人は医師に判断を仰いでください。

海藻やナッツ類、豆類でマグネシウムを摂取

マグネシウムにはカリウムの働きをサポートし、血圧を低下させる効果が期待できます。

マグネシウムが含まれている海藻やナッツ類、豆類をメニューに取り入れましょう。ナッツ類は間食などでも気軽に摂取できます。塩分の摂取量を考えると無塩の商品を選びたいものです。マグネシウムが不足すると、カリウムと同様に高血圧のリスクが高くなるため、意識的に補給することが大切と言えます。

ごぼうやこんにゃくなどで食物繊維を摂取

食物繊維は体にとって直接的な栄養にはなりませんが、糖質やコレステロールを吸着し体外に排出する働きがあり、肥満の予防に役立ちます。また、ナトリウムなどを吸着して身体の外に排出する働きがあります。ごぼうやこんにゃくは食物繊維を多く含むうえ、ある程度の咀嚼を必要とするため、よく噛むことによる満腹感も得やすい食品です。

高血圧にならない・悪化しないための食事の工夫

高血圧にならない・悪化しないための食事の工夫

上記で紹介した食材をどのように調理するのかも重要です。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(令和元年版)では、一日あたりの食塩摂取量の平均値について、男性は10.9g、女性は9.3 gであることが明らかになっています。これは摂取量の基準値である男性7.5g未満、女性6.5g未満を大きく超える数値です。

また、日本高血圧学会が推奨する、高血圧の人の一日の塩分摂取量は6g未満であり、イメージとしては計量スプーンの小さじ一杯分程度が目安となります。ここでは摂取量を目標値に近づけるための、家庭でできる減塩の工夫をご紹介します。

出典:
厚生労働省 「国民健康・栄養調査」(令和元年版)
厚生労働省 「日本人の食事摂取基準」(2020年版)

香りを意識

塩や醤油、味噌など塩分を多く含む調味料を減らす代わりに、香辛料や香りのある食材を加えることで、食事の楽しみを保ちながら減塩が可能です。

以下のような香味野菜は料理の風味が増すので、ぜひ取り入れてみましょう。

  • ハーブ(パセリ、バジル、ローズマリーなど)
  • セロリ
  • 長ネギ
  • シソの葉
  • ミョウガ
  • 山椒

以下のような酸味のある食材・調味料の利用も、塩以外の味付けとして役立ちます。

  • ゆず
  • レモン
  • グレープフルーツ
  • すだち
  • トマト

このように、お酢や香りを意識した食材を取り入れれば、減塩してもおいしく食事をいただけます。

関連記事:【管理栄養士監修】お酢と健康の関係とは?関係を種類別に解説

素材のうまみを活かす

素材が持っているうまみ成分を活用するのもおすすめです。以下のような食材は出汁として使用しやすく、料理のコクを出すのに向いています。

  • 干ししいたけ
  • 干し貝柱
  • 干しエビ
  • 煮干し
  • かつお節
  • 昆布

新鮮、旬の食材を選ぶ

新鮮な食材、旬の食材は香りや歯応えが良く、食べる時のアクセントになります。素材本来の味を楽しめば、調味料を控えめにしても食事に満足できます。

調理によって適度に焼き色や焦げ目をつけるとさらに風味が増すので、変化をつけたい時には試してみることをおすすめします。

高血圧改善のために日常生活で心がけること

高血圧の改善で気をつけるべきことは食事だけではありません。ここでは、日常生活で心がけることを紹介します。

こまめな水分補給

こまめに水分補給をすることで、高血圧予防に繋がります。水分が不足すると体内のナトリウムが排出されにくくなり、高血圧や動脈硬化を招くとされています。体内の塩分濃度を高くしないように、2時間おきに200mlほどの水分補給を心がけましょう。

適度な運動

適度な運動には血圧を下げる効果があるとされています。内容としては、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動がおすすめです。

運動は、可能であれば毎日30分以上で「ややきつい」と感じる程度に行うことが望ましいとされています。この基準では負担が強いと感じた場合は、時間や強度を調整しつつ、ムリのない範囲で運動を始めてみましょう。また運動時にケガや転倒をしないためにも、準備運動は入念に行ってください。

食事を工夫して高血圧を予防・改善しよう

高血圧は自覚症状がほとんどないため、ついそのままにしてしまう傾向にあります。しかし、改善をおろそかにしていると脳や心臓の重大な病気を引き起こし、命に関わる問題につながる恐れがあります。

高血圧の改善は日々の積み重ねが重要です。今回の記事を参考にして、毎日の食事でできることから工夫していきましょう。

監修者写真

監修者
福井 美典 医師
(糖尿病専門医・抗加齢医学専門医・救急科専門医・総合内科専門医・栄養療法医・美容皮膚科医)

からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高タンパクの食事の大切さを、自ら栄養指導をおこなう。分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、からだの細胞を活性化させる治療法を取り入れている。
野菜ソムリエの知識を生かし、栄養素が効率良く摂れる食べ合わせを意識したレシピを考案。美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。

「【医師監修】これが知りたかった!高血圧の予防・改善につながる食事のススメ」をシェアしませんか?

すこやかナビ一覧へ